「アントレプレナーシップ教育」とは?

近年「アントレプレナーシップ教育」に対するニーズや関心が高まっています。耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか?

「アントレプレナーシップ(entrepreneurship)」は、日本語で「起業家精神」と訳されます。

具体的には、ゼロから会社や事業を起こそうとする精神のことを指し、このような起業家精神を養う教育がアントレプレナーシップ教育です。

 

アントレプレナーシップは、新たに会社を設立したりベンチャー企業を立ち上げたりする人に関わるものと思われがちです。

しかし、既存の企業や組織の中で、従業員として新たな価値を創造したり、変革をもたらしたりする際にも重要な要素といえます。

 

 

日本に不足しているアントレプレナーシップ

様々な報告書で、日本は諸外国と比較してアントレプレナーシップに関する指標が低いことが指摘されています。

また、大学におけるアントレプレナーシップ教育についても、1%の学生にしか提供されていないなど、充実しているとは言い難いのが現状です。※1

 

日本に起業家が少ない理由としては「失敗に対する危惧」「身近に起業家がいない」「アントレプレナーシップ教育が不十分」「安定的な雇用を求める」などが考えられます。

不安を感じやすく安定を求める、和を重んじるが故に思い切った挑戦ができないなど、国民性も関係しているかもしれません。

 

※1 出典:文部科学省「【資料1】アントレプレナーシップ教育の現状について」

https://www.mext.go.jp/content/20210728-mxt_sanchi01-000017123_1.pdf

 

 

アントレプレナーに求められるスキル

具体的に、アントレプレナーにはどのようなスキルが求められるのでしょうか?

最初に挙げられるのは、「クリエイティビティ(創造性)」です。

クリエイティビティには、独創的なアイデアや革新的な方法を生み出す力だけでなく、既存のやり方を見直す力や改善する力なども含まれます。

 

2つ目は「コミュニケーション能力」です。

画期的なアイデアが浮かんだとしても、個人の力で達成することは難しいはずです。多くの人を巻き込み協力してもらうことで、事業の成功率はアップします。

 

3つ目は「リーダーシップ」です。

事業規模が大きくなるほど、チームのメンバーやビジネスパートナーの人数は多くなります。自分の思い描くビジョンや目標を明確にし、メンバーと共有してゴールに突き進むリーダーシップが必要不可欠です。

 

4つ目は「ビジネスノウハウ」です。

上記の3つのスキルを持ち合わせていたとしても、その分野におけるノウハウがなければ、アイデアやリソースをいかすことはできません。

 

 

大学におけるアントレプレナーシップ教育の内容

各大学で実施されているアントレプレナーシップ教育は、「入門編」「応用編」「実践編」の3段階に大きく分けられます。

「入門編」は起業家による講演や、デザイン思考・仮説思考といった思考法に関する授業です。

 

「応用編」では経営戦略・マーケティング・組織論などの経営に関する知識や、ファイナンス・法務・知的財産権などの専門知識を得る授業、プレゼンや交渉スキル、ビジネスプランの作成を学ぶ授業が挙げられます。

 

最後の「実践編」では、ビジネスプランに基づく仮説検証や顧客ヒヤリングなどを実施します。ただし、日本の大学では「実践編」に関するプログラムの割合が低いのが課題となっています。

 

 

指導者不足が課題

多くの大学で、アントレプレナーシップ教育の必要性を感じているものの、指導する教員や支援する協力者など、人的リソースが不足している点が課題となっています。

 

日本のアントレプレナーシップ教育を充実させるには、教員の育成や、民間企業・外部機関との連携など、多くの課題が山積しているのが実情です。

予算の不足も問題となっている大学が多く、国による更なる支援が望まれます。