首都圏に残る自然の宝庫へ出かけよう! 『谷戸』と『里山』
『谷戸』って?東京・神奈川・埼玉を中心に『谷戸(やと)』という地名が多くみられます。特に東京の多摩地区から神奈川県にかけて多く、しばしば『~谷』『~谷戸』といった名前の町やバス停を確認することができます。 谷戸は古くからの稲作地帯だった!谷戸は山や丘ぞいに多くみられますが、かつては尾根と尾根にはさまれた谷を指す地名でした。谷戸は、古くから関東地方の人々の歴史と密接な関わりがありました。現在ではすっかり宅地化されてしまった首都圏西部ですが、かつては多摩丘陵・狭山丘陵など低くなだらかな丘が続く中に水田が広がる農村地帯でした。谷あいにある谷戸には周辺に降った雨水が集まります。そして集まった地下水がわき水となって地表に出てくるため、水が得やすい地形だったのです。そのため谷戸では古くから稲作が盛んでした。 谷戸周辺に残る『里山』さらに、周辺の森林ではたきぎ用の木材や肥料の材料である下草がたくさん手に入ります。電気もガスも化学肥料もない時代、森林は農業、そして人々の生活を支える重要な資源でした。そのため人々は共同で森林を管理し、手入れをして維持してきました。こうして、人の手によって保たれてきたのが『里山』です。里山は山や森林だけでなく、水田やため池など農村の人々が暮らしてきた地域すべてを含みます。 今見直される、里山の役割先ほどお伝えした通り、里山は、人の手によって維持されてきました。森林の根元に生える下草を刈り取り、木の枝をはらうなどしていたので、森林の中には適度に日光が入り、様々な生き物が生息するようになりました。さらに、水田やため池を設けたことで豊富な水がたくわえられたことも、生き物にとって住みやすい条件を作り出していました。生き物の集団とそのすみかとなる場所をまとめて生態系とよびますが、里山は『人の生活によって生態系が維持されていた場所』といえるのです。また、里山に広がる豊かな森林も重要なはたらきをしています。森林は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収して酸素に変えます。さらに根で地下水をたくわえ、一気に雨水が山を流れ下り土砂くずれを起こすのを防いでくれます。森林がもつ、このような水をたくわえるはたらきは『緑のダム』とよばれます。近年、宅地開発や農業を行う人の減少などで里山は急速に失われつつありますが、環境問題が重大なテーマとなっている現代において、私たちの生活を守ってくれる里山は保全していくべき存在だといえます。 里山は、中学受験問題の題材にもなる中学受験では、環境に関するテーマがよく問われますが、里山もその一つです。最近は世の中の問題について受験生に考えさせるような出題が多いので、里山のように身近にある自然は出題者にとっても『ねらい目』なのです。でも、里山の実際のすがたは、実際に見てみないとなかなかわかりません。なかなか自然体験ができない首都圏で、気軽に自然とふれ合える場所、それが里山です。行ったことがないという人は、ぜひ一度出かけてみてください!