算数・数学への関心を育む文化「算額」とは
算数・数学への関心を育む文化「算額」とは
日本数学検定協会が、東大寺に奉納した数学の額「算額」の解答を募集する「算額1・2・3」の優秀解答を公式ウェブサイトに公表しました。「算額1・2・3」は、算額という古来先人たちが取り組んだ「数学の学びの文化」を現代に復興し、日本の数学文化推進の礎にしたいという想いと、「算数・数学に興味をもっていただく機会の増進」「算数・数学を通じた人々の交流の活性化」などを目的に実施しています。2018年のコンテストは全国で20の学校・団体が活用し、応募総数は1,459通にもおよびました。
東大寺に奉納した「算額」の解答を募集
「算額」とは、江戸時代の数学者や一般の数学愛好家たちが、数学の問題や解法を絵馬や額に書いて神社や仏閣に奉納しあった、日本独自の文化といわれています。日本数学検定協会は、「算額文化を広める日」に制定した1月23日に華厳宗大本山「東大寺」に2問の算額を奉納し、その解答を9月7日まで募集しました。
1問目は、大仏様(座高14.98m、頭の長さ6.7m、左膝~足首まで6.8m)が肩まで浸かってお風呂に入るとしたら、何L(リットル)のお湯が入る湯船が必要かという問題が出題されました。この問題は、東大寺には現存する中で日本最古の浴場である「大湯屋」があることにちなんでいます。2問目は、東大寺の梵鐘(総高3.86m、口径2.71m、重量26.3t
)とケヤキ造りの撞木(長さ4.48m、直径30cm、重量180kg、金具を含めた重量200kg)を使い、平成30年1月1日の真夜中の12時に8人が一体となって大鐘を力強くつくと、鐘の音は半径何kmまで届くかという問題の書かれた絵馬が奉納されました。
解き方を評価。優秀解答賞に選ばれた中学生の解答
東大寺に奉納された算額では、ユニークな解答を作ってもらうために、問題を解く際の条件を必要最小限にとどめています。解き方に着目して審査した結果、問題一と問題二でそれぞれ1人の最優秀解答賞と2人の優秀解答賞が選ばれました。
優秀解答賞の受賞者のうち、問題一では2人、問題二では1人が中学生でした。問題一では、大仏様の体の一部を測定した結果を活用しながら、大仏様の顔・胴体・腕・足をそれぞれ円柱に近似し、「座禅を組んでいる状態」「手足を伸ばした状態」に分けて細かく図案化・検証した13歳の解答が選ばれました。また、湯船の形をy=x4のy軸まわりの回転体に近似して考え、必要となる水量を25mプールの4杯分に置き換えて説明した13歳の解答も優秀解答賞に選ばれました。
問題二では、大鐘から平城京までの距離を算出し、当時その場所ではどのように鐘の音が聞こえていたかも想定しつつ、さらに音の減衰についても考慮に入れて鐘の音の聞こえる範囲を求めた14歳の解答が優秀解答賞を受賞しました。この解答では、知識の活用・データ分析の観点からも積極的な実践が認められた点が評価されています。
古来の算額は、解けた喜びに感謝するために、問題だけでなくその解法も記して奉納しました。しかし「算額1・2・3」では、自分で解きたくなるようにあえて問題のみを記した「出題形式」の算額を奉納しています。日本数学検定協会は2019年も1月23日に新しい算額を奉納し、解答を広く募集する予定です。数学を学ぶ大切さや楽しさを知り、興味を深めるきっかけにしてみてください。