国立大学の一法人複数大学制度、現時点の構想とは
国立大学の一法人複数大学制度、現時点の構想とは
文部科学省では、少子化の進展や厳しい財政状況のもとで、一法人複数大学という方式が提案され、検討されています。平成30年10月24日には第3回の調査検討会議が行われ、その資料には、統合に向けた各国立大学法人における検討状況に関する内容も含まれており、国立大学法人が検討している再編のイメージが記載されています。
魅力ある国立大学を作るための一法人複数大学制度
国立大学の一法人複数大学制度とは、1つの法人が複数の大学を経営する制度です。一法人複数大学制度の導入により、「限られた教育研究資源をより効率的・ 効果的に利用できる」「小規模な個々の大学の教員や研究組織を統廃合・再編することにより、より強力な研究体制を形成することができ、外部環境に適応して新たな研究教育部門の弾力的な設置が可能となる」等の利点があるとされています。
資料に記載された4つの構想の概要
文部科学省が公表した調査検討会議の配布資料には「北海道内国立大学法人の経営改革の推進」「東海国立大学機構(仮称)構想による新しい大学モデルとNext Societyの実現」「地域の中核拠点としての機能強化による新たな大学の再編(案)」「奈良教育大学と奈良女子大学の連携概要と基本設計」の4つの構想が挙げられています。
「北海道内国立大学法人の経営改革の推進」は、小樽商科大学と帯広畜産大学、北見工業大学が経営統合して新法人を設立するとともに、三大学の分野融合型教育システムの開発や、三大学共同の産学連携体制の構築をはかる取り組みです。
「東海国立大学機構(仮称)構想による新しい大学モデルとNext Societyの実現」は、産業界・地域と連関した発展の好循環 モデルの中核にある大学群(TOKAI PRACTISS)が東海地区を国際的にも有数のTech Innovation Smart Society とするための転換に貢献するよう、一法人複数大学の国立大学法人東海国立大学機構(仮称)を設立します。目標の実現のため、東海地域におけるこれまでの連携実績を活かし、財政基盤強化と次世代教育の展開による教育力強化、大型研究拠点の形成等による研究力強化、大学連携を核とした産業構造の変革などを進めます。
「地域の中核拠点としての機能強化による新たな大学の再編(案)」は、静岡大学と浜松医科大学で新国立大学法人を設立し、3年後を目標に静岡市に静岡大学静岡キャンパスを中心とする大学と、浜松市に浜松医科大学を中心とする大学を設置し、より地域活性化、国際競争力の強化を促進します。また、5年後には新国立大学法人に加えて地域の公立大学法人や学校法人等が参画した大学等連携推進法人(仮称)を設立します。地域社会に開放された知の拠点として、地方自治体や地域社会、地域中小企業、グローバル企業等との連携をはかります。
「奈良教育大学と奈良女子大学の連携概要と基本設計」は、平成34年度を目標に、奈良教育大学と奈良女子大学が連携して一法人二大学の国立大学法人奈良(仮称)を設立する取り組みです。一法人二大学になることで、教養教育の共同実施や、「新しい高度教員養成システム」を構築するための教員養成にかかる連携を進めるほか、工学系共同教育課程を設置し、奈良の地での工学人材の輩出を目指します。
4つの構想に記載された国立大学法人は、それぞれの大学の特色を取り入れつつ、再編による機能強化を目指しています。時代とともに変わりゆく大学。その方向性を示す動きとして知っておくと良いでしょう。