222(コラム)

ノーベル賞受賞者が子ども時代に読んで感銘を受けた『ロウソクの科学』を紐解く

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科学の面白さに開眼させてくれる良書。子どもに読ませたい一冊

 

イギリスの科学者、マイケル・ファラデーの講演を一冊の本にまとめた『ロウソクの科学』が注目を集めています。

きっかけは2019年のノーベル化学賞に輝いた旭化成名誉フェローの吉野彰さんの発言。なぜ化学に興味を持ったかを質問されて、小学校4年生の時に先生からこの本を薦められたことを挙げました。

 

「小学3、4年の子どもが読むのにちょうどわかりやすい。ロウソクはなぜ燃えるのですか。なぜ炎は黄色いのですか。ロウソクの芯は何のためにあるのですか、ということが書かれていて、子ども心に化学はおもしろそうだなと思いました」と吉野さん。

 

2016年にノーベル医学生理学賞を受賞した東京工業大学栄誉教授の大隅良典さんの場合も、ノーベル賞に導いたのがこの本との出会いでした。

子ども時代に12歳年上の兄からこの本をもらったことが、自然科学の研究者を目指すきっかけになった、と語っています。

 

『ロウソクの科学』は、子どもの科学への芽を育てるまたとない良書、と言っても過言ではありません。

 

 

電磁誘導、電気分解、光の磁気効果などさまざまな法則を発見

 

ファラデーは1791年、ロンドンの貧しい鍛冶屋の家庭に生まれました。製本屋での小僧時代に化学実験に目覚め、著名な化学者の実験助手を務めたことから独学で研究の道を歩み始めます。

ファラデーは、今生きていたらいくつもノーベル賞を獲得しただろうと言われるほど、歴史的な発明・発見を多数残しています。電磁誘導をはじめ、電気分解の法則や光の磁気効果などを発見、近代科学の基礎を築きました。

 

『ロウソクの科学』は1861年のクリスマス休暇に、ロンドンにある王立研究所で行われた連続6回の講演を収録したものです。この時、ファラデーは69歳。6年後の1867年には死去しています。

 

クリスマス講演は、王侯貴族から一般市民まで幅広い階層の人々が注目したと言います。しかも、1825年の初開催以降、戦争の時代を除いて今日まで連綿と続いているのですから驚きです。

 

 

現象をよく観察し、分かりやすい実験で理由を裏付ける

 

もう少し、本の内容に入っていきましょう。

本の構成は、第一講「一本のロウソク――その炎・原料・構造・運動・明るさ」から第六講「炭素すなわち木炭・石炭ガス・呼吸および呼吸とロウソクの燃焼との類似・結び」まで6章で展開しています。

 

一貫しているのは、現象をよく観察すること。そして、その現象を分かりやすい実験と巧みな話術によって説明していることです。また、ところどころに実験を補完する興味深い挿絵なども描かれています。

 

第一講は、「ロウソクの身の上話」から始まります。ロウソクの原料や作り方を知ったうえで、ロウソクの炎をよく観察。なぜ炎は立ち上るのか、なぜ溶けたロウは木綿の芯を伝わっていくのかといったことを、石油ランプとの比較なども交えて進みます。

 

以降の章では、燃やすことで発生する水や炭素、二酸化炭素などの生成物を分析します。さらに水を水素と酸素に電気分解したり、水素でシャボン玉を作ったり、面白い実験を次々に行います。

 

最終章では、木炭などの炭素が燃えると二酸化炭素が発生することを実験。人間の体内でもロウソクと同じ燃焼が起こっているとして、息の中に含まれる二酸化炭素で石灰水が白く濁ったり、息を満たしたガラス管の中では火が消えてしまったりすることを実験します。

 

そして炭素(食品)を食べ、それを肺から取り込んだ酸素で燃焼し、二酸化炭素として排出するという人間の営みの説明で完結します。

子どもだけではなく大人も感銘を受ける興味深い内容ですので、保護者の方も一読してみてはいかがでしょうか。

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