「フラッグシップ大学」は日本の教育を変えるか?
日本の教育は変革が必要
教育分野の有識者の間では「AIやロボットの普及など、高度に科学技術が発達した新時代に向け、日本の教育も根本から変革しなければならない」という危機感が広がっています。
教育を変えるには、教師を変えなければなりません。そして教師を変えるには、教師を育成する大学を変える必要があります。このような観点から生まれた構想が「フラッグシップ大学」です。
「フラッグシップ大学」とは何か?
そもそもフラッグシップとは、司令官が乗って隊の指揮をとる旗艦のことです。これが転じて、組織などの中で最も重要な役割を果たすものや、最上級のもの、象徴的存在といった意味で用いられます。
「フラッグシップ大学」は、文部科学省に設置された中央教育審議会のワーキンググループが提唱しているものです。
中央教育審議会のワーキンググループによると、フラッグシップ大学は先導的かつ革新的な取り組みを実践し、数ある教員育成大学を牽引していく中核的な役割を担う大学とされています。
このような中核的な大学を政府が支援することで、日本の教員育成の枠組み自体に革新をもたらそうというのが「フラッグシップ大学構想」の狙いです。
フラッグシップ大学の役割
高度化する社会に適応する新時代の教育、例えばICTや教育ビッグデータの活用といった新たな分野に対して、革新的な取り組みや研究開発を行い、その成果を他の教員育成大学や学部に展開していく、それがフラッグシップ大学の大きな役割です。
さらに、教育現場が直面する課題を解決するための対応策の提示や、研究成果に基づいた政策提言を行うなど、教育分野における重要な責務を担うことも期待されています。
このようにフラッグシップ大学は、社会にとっても重要な役割を期待されています。そのため、役割や機能を果たせる少数の大学のみが、厳正な審査のうえでフラッグシップ大学に選定されるようです。
フラッグシップ大学の選定方法
フラッグシップ大学は、まず必要な要件を満たしたうえで希望する大学を募り、専門家による厳正な評価と選定を行います。
令和3年度から取り組みを開始することを想定し、初回の公募は令和2年度内に行われる予定です。
フラッグシップ大学に公募するための要件として挙げられているのは、・教員育成のための学部や大学院、附属学校などを全て備えていること・教員養成において、特に優れた実績を有していること・教育分野における高い研究力と優れた実績を有していること・先端技術、科学的知見などを活用した今後の教員養成のあり方に関する研究開発や構想を有していることなどです。
高い教員就職率を誇る兵庫教育大学などは、すでにフラッグシップ大学へ名乗りを上げ、申請に向けた準備を進めています。今後は、他の教育大学も応募の意志表明を行うことが見込まれます。
日本の教育はどのように変わるか?
フラッグシップ大学によって、日本の教育はこれからどのように変化していくのでしょうか。
ワーキンググループは、これからの教師には、ICTや先端技術をうまく活用して生徒の問題発見や解決できること、生徒一人ひとりに合った学習方法を構想できること、生徒の意見を引き出しコーディネートできることなどが重要だとまとめています。
一方で、フラッグシップ大学による改革は、深刻な問題を有していることも事実です。
新時代に求められる教員は、単に担当教科の知識を有しているだけではなく、高度で多角的なスキルも必要です。ただでさえ教員志望者の減少が問題となっている昨今、教員のハードルを上げてしまうと、志望者の減少に拍車を掛けてしまう恐れがあります。
教員のスキルアップも大事ですが、教員に対する待遇の見直しや就労環境の改善なども、同時に実施していかなければなりません。
これからの教育や教員のあり方は、社会全体で検討していかなければならない課題といえるでしょう。