高校の新科目「総合的な探求の時間」とは?
2018年に学習指導要領が改訂
2018年に「高等学校学習指導要領」が改訂され、順次移行が進む中で、従来の「総合的な学習の時間」が「総合的な探求の時間」へと変更されました。
「学習」から「探求」へと変更された背景やねらい、効果には、どのようなことがあるのでしょうか。
「総合的な学習の時間」とは?
従来の「総合的な学習の時間」は、2000年頃から小中高において行われるようになった授業です。その目標としては、「横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育成するとともに,学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的,協同的に取り組む態度を育て,自己の在り方生き方を考えることができるようにする」とされていました。※1
「総合的な探求の時間」とは?
2018年に改訂された新しい学習指導要領によると「総合的な探求の時間」の目標は、「探究の見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,自己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力」を育成することとなっています。※2
「総合的な学習の時間」で掲げられた目標とあまり内容が変わっていないようにも見受けられますが、自己の生き方を考えることを重視しながらも、より課題発見・課題解決の能力を育成することに重きを置いている表現となっていることが分かります。
「探求」の4つのプロセスが重要
今回クローズアップされている「探求」というキーワードについて、もう少し掘り下げて見ていきましょう。
文部科学省では、探究的な学習には以下の4つのプロセスがあるとしています。
1.課題の設定
2.情報の収集
3.整理・分析
4.まとめ・表現
そして上記の探求のプロセスを意識した学習活動に取り組んでいる生徒は、そうでない生徒と比較すると、各教科における正答率が高いという調査結果があり、成績のみならず学習姿勢の改善にも大きく貢献しているということです。
また従来の「総合的な学習の時間」における問題点も指摘されました。それは学校ごとの取り組み内容にばらつきがあることや、探求プロセスの「3.整理・分析」と「4.まとめ・表現」に対する取り組みが不十分といったことです。
つまり、従来の「総合的な学習の時間」では、十分に効果を上げられていないという問題があり、より探求プロセスを重視した、新たな枠組みが必要であるとの判断が今回の改訂につながっています。
「総合的な探求の時間」がもたらす効果
これからの時代はテクノロジーの進歩やグローバル化が加速し、ますます先行きの見通しが困難になっていくと考えられます。そんな社会情勢の中で武器となるのは、自ら考え、情報収集し、知識を総合的に活用した上で、他者と協力しながら課題を解決する力であり、「総合的な探求の時間」を通じてそのような力を磨くことができます。
また、今までの学習のように他人から知識を押し付けられるのではなく、自分のやりたいことや興味のあることを探求するのは「楽しい」と感じる生徒は多いはずです。このように勉強を「楽しい」と思える経験は、その後の大学生活や社会に出てからもいきてきます。
どんな「課題」を設定すべきか?
「総合的な探求の時間」では、自らが考えて研究テーマとする「課題」を見つけなければなりません。とはいえ、なかなか課題が見つからないこともあるでしょう。どのようなテーマが、課題としてふさわしいのでしょうか?
まず自分が興味のある分野や、将来なりたい職業に関すること、今後目指すキャリアに関連のあることをテーマにするのがおすすめです。
難しい問題や高度な内容をテーマに選ぶ必要はありません。あまり背伸びをせず、自分が実際に現地で取材できるものや、インタビューできる人が身近にいるほうが、より深く具体的に学ぶことができます。
そしてその課題を学ぶことが、横断的・総合的な学習につながり、よりよく課題を解決する能力の育成に貢献する内容であることが理想です。
それでも課題が見つからない場合は、ニュースや新聞に目を通して、色々な人に話を聞いてみるなど、日常の中で常にアンテナを張り巡らせてみることをおすすめします。
※1出典:「高等学校学習指導要領」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/kou/kou.pdf
※2出典:「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」(文部科学省)