「義務教育学校」とは? メリットや小中一貫校との違いを解説
最近話題の「義務教育学校」
2016年に新設され、新たな義務教育の形として話題になっている「義務教育学校」。これまでの小中一貫校との違いや、どのような特徴を持っているのか気になっている方も少なくないでしょう。
「義務教育学校」の特徴やメリット・デメリットなどについて詳しくご紹介します。
「義務教育学校」とは?
義務教育学校とは、『学校教育制度の多様化及び弾力化を推進』(※1)するために新設された学校です。現行の小・中学校に相当する課程を併せ持ち、義務教育として行われる普通教育を一貫して施す9年制の学校を指します。
2016年から正式に制度化され、2020年5月時点では全国に126校(うち公立121校、国立4校、私立1校)あります。
※1文部科学省「学校教育法等の一部を改正する法律案(概要)」
https://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/03/17/1356011_01_1.pdf
「義務教育学校」設立の背景
現行の「小学校6年制+中学校3年制」という義務教育制度では「中1ギャップ」と呼ばれる問題が起こっており、そもそも義務教育制度自体が現代の児童に合っていないのではという指摘が以前からありました。
中1ギャップとは、小学校から中学校に進学して通学距離や交友関係、授業内容などが大きく変わる際に感じるつまずきのことで、成績の低下やいじめ、不登校などの要因になる場合もあります。
また少子化の影響により、学校の統廃合が進んでいるのも背景のひとつです。これらの課題を解決するために9年制の「義務教育学校」が設立されました。
小中一貫校との違いとは?
義務教育学校と従来から存在している小中一貫校は、9年間をトータルで捉えて教育を行う点では共通しているため、義務教育学校は小中一貫校の一種と捉えることもできますが、実ははっきりと区別されています。
わかりやすい違いは、小中一貫校は小学校と中学校でそれぞれ校長がおり、教職員の組織体系も別々ですが、義務教育学校は一人の校長と一つの組織で構成されている点です。
これにより、小学校6年制・中学校3年制という枠組みではなく、例えば小学校5年・中学校4年とするなど、従来の学年制にとらわれない教育方針を推進できます。
施設形態の違い
義務教育学校や小中一貫校は、「施設一体型」「施設隣接型」「施設分離型」の3つの施設形態に分かれます。
施設一体型は、同一の校舎内で9年間の一貫教育を実施する形態です。義務教育学校に多い施設形態になります。施設隣接型は小学校と中学校の建屋が別々で、それぞれ隣接しているものを指します。
そして施設分離型は、離れた場所にある小学校と中学校で9年間の一貫教育を行います。小中一貫校に多い施設形態です。
義務教育学校のメリット
義務教育学校では、9年間同じ環境で教育を受けることができるため環境の変化が少ないです。生徒の心理的ストレスが軽減されるため、中1ギャップも起こりづらくなります。
また、9年間という長いスパンで教育方針を検討できるので、学校の方針に合わせて柔軟にカリキュラムを組めるのも大きなメリットです。
従来の義務教育制度では困難だった早期カリキュラムの導入や、小学校段階から学級担任制ではなく教科担任制を導入できる点、小中一貫の部活動によるレベル向上など、さまざまな強みを発揮します。
義務教育学校のデメリット
デメリットとしては、9年間ほとんど同じ集団の中で学校生活を過ごすため、新たな変化を起こす機会が失われる点が挙げられます。
例えば、小学校の段階で人間関係や学習面で挫折してしまった生徒は、中学校で環境を変えて再スタートしたいと考えているかもしれません。また挫折していなくても、環境が変わることで新たな出会いや発見がある可能性もあります。
義務教育学校は、こうした機会を奪ってしまうことに繋がりかねない点も念頭に入れておく必要があるでしょう。
メリット・デメリットをおさえて学校選びを
義務教育学校や小中一貫校は、独自のカリキュラムを実施できたり環境の変化による子どもへの負担を心配したりする必要がないなど、従来の学校教育にはない魅力がありますが、デメリットがあることも忘れてはなりません。
それぞれのメリットとデメリットを勘案したうえで、教育方針や子ども個性に合う学校を選ぶようにしましょう。