「大学入学共通テスト」はセンター試験と何が変わったのか?
2021年度よりスタート
「大学入学共通テスト」は、従来の「大学入学センター試験」に代わる新たな試験として、2021年1月よりスタートしました。2022年1月には、2回目の試験が行われる予定となっています。
しかし、なぜ従来のセンター試験は廃止されたのでしょうか。従来のセンター試験が廃止された背景や変更点を知っておけば、どのような対策が必要なのかを理解する手助けになるはずです。
「大学入学共通テスト」導入の背景
センター試験から大学入学共通テストへの移行は、国が推進している「高大接続改革」の一環と位置付けられています。
近年のグローバル化や少子高齢化、AI・ロボット技術の発展などが急速に進む社会情勢の中、これからの社会で必要とされる資質や能力も変化してきています。時代に求められる能力を育み、公正な評価を行うために、高校教育・大学入試・大学教育を一貫して改革していこうというのが高大接続改革です。
従来のセンター試験で重視されていたのは、主に知識量でした。知識量だけでなく、これからの時代に必要とされる主体性や思考力、判断力、表現力なども総合的に判断できる、新しいテストの必要性が高まったというわけです。
「記述式問題」はどうなる?
大学入学共通テストの目玉のひとつとされていた「記述式問題」は、2021年度の試験では導入が見送られています。
元々の計画では、国語と数学については従来のマークシート式に加え、文章を記述させる問題を出題するとされていました。しかし、多くの課題が残るとの指摘を受け、採用を断念しています。
課題として挙げられたのが採点方法です。記述式問題の採点は、大学入試センターが委託する民間企業が行う予定でしたが、膨大な量の答案を民間企業が公平に採点できるのかといった不安の声が、受験生や高校側から多数寄せられました。
採点の公平さが問われる共通テストにおいて、記述式問題の採点は難しい問題です。現時点では、採用される見通しは立っていません。
「英語外部試験」はどうなる?
大学入学共通テストのもうひとつの目玉とされていた「英語外部試験」についても、2021年度の試験では導入が見送られています。
英語外部試験は、国が認定する英検やTOEICといった民間の資格試験の結果を、英語の点数として採用する制度です。「読む」「聞く」「話す」「書く」という英語4技能をバランス良く評価するために採用が検討されていました。
しかし、異なる民間試験の結果を一様に利用するのが難しい点や、民間試験の受験に各家庭の経済的負担や地域格差が生じる可能性があるとの指摘があり、2024年度まで導入が延期されています。
センター試験からの変更点
上記の大きな変更点が撤回されたことで、大学入学共通テストはセンター試験とほとんど同じなのではと思われるかもしれませんが、大きく変わった点もあるので注意が必要です。
まず全教科を通して、思考力が問われる問題が出題される点です。センター試験よりも知識のみで解ける問題が減り、問題文をしっかり理解する深い理解力や考察力を求められます。
また、国語では実用的な文章が出題される可能性が高い、数学では「数学I」の回答時間が60分から70分に延びているなどの変更もあります。
英語は変更点が多い
英語は配点が変更されました。センター試験では筆記(200点)とリスニング(50点)という配点でしたが、大学入学共通テストではリーディング(100点)とリスニング(100点)で、これまで以上にリスニングが重視されます。
ただし、選抜に使う配点は大学側で独自に設定できるため、英語の配点が必ずしも1:1の比率になるとは限りません。受験する大学の配点比率を事前に確認するようにしましょう。
設問の変更点としては、問題文がすべて英語で書かれているのが大きな違いです。
リーディングでは発音・アクセント問題や語句整序問題が廃止されています。また、従来のリスニングは英語の読み上げ回数が2回だったのに対し、問題によって1回と2回が混在しているなどの変更があります。
どんな対策が必要か?
大学入学共通テストは、従来のセンター試験のように、過去問でパターンを覚える学習法だけでは対応しきれないことが予想されます。
模擬試験や問題集に出てこなかった問題が出題されても、慌てず冷静に設問に向き合える柔軟さや対応力が求められるでしょう。
思考力や判断力、表現力といった能力は、一朝一夕で身に付くものではありません。高校三年間でこれらの能力を意識的に強化していくようにしましょう。