「エリクソンの発達段階論」とは? 年齢別にクリアすべき課題をチェック
教育者必須の理論
子どもに適切な教育を行うには、子どもの行動パターンや心理的特性といった知識が欠かせません。
しかし、一口に子どもといっても、乳幼児から幼児期、小学校低学年から高学年、そして思春期など、年齢によって心理的傾向や特徴は異なります。
年齢別に子どもの心理を理解し、それに合わせて教育方針を変えていくための代表的な理論が、エリクソンの提唱した「発達段階論」です。
エリクソンの発達段階論とは?
エリクソンは20世紀に活躍したドイツ生まれの発達心理学者・児童分析家です。著書『幼児期と社会』で心理社会的発達理論(発達段階論)を発表しました。
また、「アイデンティティ」(自己同一性)や「モラトリアム」(自己を確立するまでの猶予期間)という概念を提唱し、現代の心理学に多大な影響を与えたことでも有名です。
エリクソンの発達段階論では、人間が産まれてから死ぬまでを8つの段階に分け、社会との関わり方や乗り越えるべき課題などを体系化しています。
現代でもさまざまな分野で利用されている、教職員や保育士を志す人にとっては必須の教育理論です。
第1段階(乳児期)
乳児期は、産まれてからおよそ17ヶ月までの期間を指します。
この時期には、「基本的信頼vs不信」という心理社会的危機が生じるとされています。心理社会的危機とは、わかりやすく言い換えると「解決するべき課題」です。
赤ちゃんはミルクが欲しいときや、おむつを替えて欲しいなどの欲求を満たすために、泣くことで両親や周りの大人に意思表示をします。
この時、大人が自分の望みを叶えてあげると、「誰かが助けてくれる」という他者に対する信頼を覚え、「希望」を得られます。
反対に、いくら泣いても助けてもらえないと、他者に対しての不信感や自身に対する無力感を覚えてしまうとされています。
基本的信頼vs 不信をクリアすると希望を得られるように、以後の段階でも課題と得られる力がペアで語られるのが発達段階論の特徴です。
第2段階(幼児前期)
幼児前期は、およそ生後18ヶ月から3歳までの期間で、課題は「自律性vs恥・疑惑」です。
この時期になると、赤ちゃんは立って自由に歩き回れるようになったり、言葉を覚えて自分の意志を他人に伝えられたりと、いろいろなことをできるようになります。
また、この頃は何でも自分でやりたがる時期です。親がこのチャレンジを応援し、失敗しても見守ってあげれば、子どもは「意志」という力を獲得できます。
しかし、親が先回りしたり、失敗した時にきつく叱ったりすると、子どもは羞恥心を募らせ、自分を信じてくれないのだろうかという疑惑を覚えてしまいます。
第3段階(幼児後期)
幼児後期は、3歳から5歳までの期間にあたります。課題は「積極性vs罪悪感」です。
この段階は、幼稚園や保育園に入園して社会との関わりが増え始め、さまざまなことに興味を持ち、遊びに夢中になる時期です。
同時に、親や周囲の大人に行動を注意されて、やっていいことと悪いことを覚えていきます。両者のバランスを取れるようになると、「目的意識」を獲得できます。
しかし、過度に叱られるなど、積極的な行動を否定する態度を取られ続けると、罪悪感を覚えかねません。
第4段階(学童期)
学童期は5歳から12歳までの期間で、おおよそ小学校に通学する時期にあたります。課題は「勤勉性vs劣等感」です。
先生にいわれたことを守ったり真面目に宿題をこなしたり、勤勉さをもって取り組むことで成績アップなどの成果を実感し、自分はできるのだという「有能感」を獲得できます。
一方で、勉強につまずき、授業についていけないなどの経験をすると、劣等感を抱いてしまいます。
第5段階(青年期)
青年期は12歳から18歳までの期間で、中学校から高校までの思春期にあたります。課題は「アイデンティティvsアイデンティティの混乱」です。
思春期は他人の目が気になり、自分はどう思われているのか、自分はどんな人間なのかを考え、悩みが多くなる時期です。他者との違いを認識することで、子どもは少しずつアイデンティティを確立していきます。
周囲の大人や友人から認められることで自信が生まれ、自分らしさや信念に対する「忠誠心」を獲得できます。
一方で、他人から認められる経験がないと「自分は一体何者なのだろう」「何のために生きているのだろう」と悩みを抱えてしまいがちです。
第6段階以降
発達段階論はこれ以降も、第6段階(成人期)、第7段階(壮年期)、第8段階(老年期)と続き、それぞれの段階で課題と獲得できる力が解説されています。
エリクソンの発達段階論には、生涯の指針となる教訓が含まれています。子どもの教育に対するヒントになるものなので、興味のある方は調べてみてはいかがでしょうか。