幼少期の体験がその後の能力に影響する? 子どものうちに体験させてあげたいこと
「実体験」の価値が高まる時代へ
現代の子どもは、我々大人世代が子どもだった時代とは大きく異なる環境で生活しています。
ITの飛躍的進歩により、スマホがあればいつでもどこでも世界中の情報に瞬時にアクセスし、簡単に知識を得ることができる時代です。
子どもたちは大人が驚くほど豊富な知識を持っている一方で、外遊びの減少により実体験が乏しい傾向にあります。
誰でも手軽に専門知識を得られる時代において、知識量だけで他者との差別化を図るのは難しくなっています。一方で、実体験の持つ希少性や価値は、相対的に上がっているといえるはずです。
幼少期の体験の重要性を示す研究結果
独立行政法人 国立青少年教育振興機構より、興味深い研究結果が発表されています。
表題は「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」で、研究テーマは「子どもの頃の体験が、その後の人生にどう影響しているか?」というものです。
具体的には、子どもの頃の体験を通じてどんな資質や能力を得られるか、人間形成にとってどの時期にどのような体験をすれば良いのかということを、約16,000人に対するアンケートによって調査しています。
幼少期の実体験や自然体験が人格形成において重要だということは、感覚的には理解できますが、本研究はそれを統計データに基づいて明らかにしたものです。調査結果の内容を、一部抜粋してご紹介します。※1
「体験」と「資質・能力」の定義
本研究において「子どもの頃の体験」は「自然体験」「動植物とのかかわり」「友達との遊び」「地域活動」「家族行事」「家事手伝い」としています。
そして「体験を通じて得られる資質・能力」は「自尊感情」「共生感」「意欲・関心」「規範意識」「人間関係能力」「職業意識」「文化的作法・教養」という項目に分類されています。
調査の結果、子どもの頃の体験と体験を通じて得られる資質・能力には、明らかな相関関係が見られることが判明しました。
成人調査の結果
成人(20代~60代)を対象とした調査では、次のような相関関係が認められました。
・子どもの頃の体験が豊富な大人ほど、やる気や生きがいを持っている人が多い
・子どもの頃の体験が豊富な大人ほど、モラルや人間関係能力が高い人が多い
・子どもの頃の体験が豊富な大人ほど、学歴が高く収入が多い
・子どもの頃の体験が豊富な大人ほど、作法・教養が高く、読む本の冊数が多い
また、青少年施設や社会教育施設を利用した人、稽古・習い事をした人ほど、最終学歴が高いこともわかりました。
青少年調査の結果
青少年(小学校高学年から高校生)を対象とした調査では、次のような相関関係が認められました。
・幼少期から中学生期までの体験が多い高校生ほど、思いやり、やる気、人間関係能力等の資質・能力が高い
・体験が豊富な子どもほど、読む本の冊数が多い
・体験が豊富な子どもほど、コンピューターゲームやテレビゲーム遊びをしない割合が高い
また、文部科学省の行った調査でも、家庭の経済状況などに関わらず、小学生の頃に体験活動の機会に恵まれていると、高校生の頃の自尊感情が高くなる傾向にあることがわかっています。※2
いつどのような体験をすれば良いか?
本調査によって、どの時期にどんな体験をするのが効果的なのかについても、明らかになっています。
小学校低学年までは「友達や動植物とのかかわり」が、小学校高学年から中学生までは「地域や家族とのかかわり」や「家事手伝い」が、能力・資質と関係性が高いという結果になりました。
体験はいつでも効果的とは限らず、子どもの年齢や成長に合わせことが大切だとわかります。
幅広い体験をさせてあげよう
本研究の詳細は紹介しきれませんが、「職業意識」を示す「できれば社会や人のためになる仕事をしたいと思う」という項目では、「近所の小さい子どもと遊んであげたこと」「かくれんぼや缶けりをしたこと」「すもうやおしくらまんじゅうをしたこと」など、一見結びつきがないように思える項目も相関関係を示しているのは興味深いところです。
どのような体験がどのような資質・能力を育むのかはわかりませんが、何らかの相関関係があるのは事実です。ジャンルを絞らず、子どもにはさまざまな体験をさせてあげることが大切といえそうです。
※1 出典:独立行政法人 国立青少年教育振興機構「「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」報告書」
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/62/
※2 出典:文部科学省「令和2年度青少年の体験活動に関する調査研究結果報告 ~21世紀出生児縦断調査を活用した体験活動の効果等分析結果について~」