「ほめる教育」は逆効果!? 間違ったほめ方・危険なほめ方
打たれ弱い若者が増えている?
職場では新入社員が入社してくるこの時期。「若者のメンタルが弱くなった」「少し叱っただけでショックを受ける子が増えた」などと思われる方は少なくないかもしれません。
最近の若者のメンタルの弱さは、さまざまな場面で取り沙汰されています。原因のひとつとして指摘されているのが、「ほめる教育」が行き過ぎた結果ではないかという点です。
近年脚光を浴びるほめる教育には、どのような問題点があるのでしょうか?
教育法に正解は存在しない
前提として押さえておきたいのが、教育法に「これが正解」という絶対の解答は存在しないということです。
子どもの個性や資質は、それぞれ異なります。子どもの性格に合わせて、教育法も試行錯誤しながら変えていかなければいけません。
ほめる教育についても同様です。ただ「すごいね」「えらいね」とほめれば良いのではなく、ほめ方やタイミング、ほめることと叱ることのバランスなどを考え、調整していく必要があります。
ほめる教育のメリット
そもそもなぜ、ほめる教育が注目を浴び、市民権を得るようになったのでしょうか。
一般的に人は、ほめられると自己肯定感が増し、積極的にチャレンジするようになったり、努力しようと向上心が生まれたりするとされています。
反対に、叱られ続けて育った人は自己肯定感を持てず、何事にも消極的になってしまうため、ほめることの重要性が叫ばれているのです。
また、東大生や成功者の話で「親がたくさんほめてくれた」などの体験談を見聞きする機会が多いことも、「ほめることは教育上良いことだ」という認識が広まった理由のひとつと考えられます。
ほめる教育のデメリット
一方で、むやみにほめることの弊害も、多くの専門家や研究者から指摘されています。
1つ目の弊害は「ほめられることに依存するようになる」という点です。
書籍などで一躍有名になったアドラー心理学では、「人をほめてはいけない」とされています。
人は一度ほめられると、「またほめられたい」と思い行動するようになっていきます。この状態は「ほめられることへの依存」で、人の自律心を阻害するものだというのです。
「ほめられ依存」の度合いが高まると、ほめられることが目的化してしまい、自分のやりたいことではなく親が望むことを選んだり、ほめられるためにズルをしたりする危険性があります。
アドラーは、「勇気づける」「感謝する」ことがほめるよりも大事だと指摘しています。
2つ目の弊害は「失敗を極度に恐れるようになる」ことです。
ほめられ続け、ほめられることが普通の状態になると、少し注意されただけで強いストレスを受けてしまいます。
これは、むやみやたらとほめられて育った子どもに表れる特徴です。頑張らなくてもほめてもらえると知っているので、困難に立ち向かったり、新しいことに挑戦したりしなくなります。
また、失敗の経験が少ないため、チャレンジを極度に恐れて土壇場に弱くなってしまいがちです。
「ほめ方」のポイント
アドラーの「人をほめてはいけない」という主張は行き過ぎの感があるものの、むやみにほめる危険性はおわかりいただけたかと思います。
ほめる際に注意したいポイントは、「簡単にほめない」ということです。
ほめるという行為は人を高揚させ、人の行動を変えるほどの効果がある一方、依存症にしてしまう恐れもあります。扱いの難しい劇薬のようなものだと心得ましょう。
また、結果だけを見るのではなく、プロセスや努力も認めてあげることが大切です。結果だけをほめると、結果が出なかった時に落ち込んでしまい、ズルをしてでもほめられたいと考えてしまう恐れがあります。
「ほめる」と「叱る」のバランスが大事
子どもの努力や成長を目の当たりにした時、人として称賛に値する行動をとった時などに、親として子どもをほめるのは至極自然で、否定されることではありません。
しかし、「ほめて伸ばす教育」という風潮が行き過ぎた結果、さまざまな弊害が生じているのも事実です。
大切なのは、ほめ方と叱り方を考え、それぞれのバランスを取ることです。
ほめると叱ることのバランスが取れているか、見直してみてはいかがでしょうか。